2011年7月22日金曜日

新幹線で「虐殺器官」を読む

ずいぶんご無沙汰してしまいました
(よ)です

旅は、読書に限ります
しかも乗り物にのる時間が長い時のSFはオススメです
頭の先まで世界に入り込めるからです
高校の修学旅行の時
ハードカバーの2分冊を読み耽ってしまい
頭の中がこんがらがっちゃって
「ホントは地球はもう存在してないんじゃないかな?」
と混乱しながら京都観光した経験あり

昨日はけして旅行ではなく
大阪への出張だったのですが
今回の旅のおともは






















伊藤計劃 「虐殺器官」

本って、読み時というか、食指の動き時というのがあって
この本もいずれ読むだろうなーと思いつつ、
なかなか手に取るテンションになれなかったんです。
なんだか「今だ―!!!!」という勘が働いた昨日。

センセーショナルなタイトルと不穏な表紙デザイン。
金髪の女が脇目もふらず新幹線の中。
これで車内で殺人事件があったら
確実にワタシが容疑者だなーと思いつつ。

結論。すごかった。
未来の地球。
アメリカで、暗殺を請負う部隊に所属する主人公。
(アメリカ以外の)世界は混沌としていて
発展途上の国々ではなぜか次々に似たような大量虐殺が起こる。
その国々の陰に見え隠れする、一人のアメリカ人。
やがて明かされる「虐殺の器官」とは何か?

単に「おもしろかった」で済ますことができない気持になる理由が二つ。
一つ目が、SFというジャンルを大きく超え
実世界と照らし合わせて、
あまりにあまりに切実な小説であること。
今の社会で善悪とか実存とか考えようとすると
絶対にひっかかってくる「アメリカ」という国。
日本人のわたしですら痛々しく感じるのに、
いま物を考える人で、アメリカ人は
この小説をどう読むのだろう?

もうひとつが、伊藤計劃がもうこの世にはいないということ。
これがなかなか食指を伸ばすことができなかった
理由でもありました。
それによって作品の評価が変わるものでは、もちろんないのだけど
そこまで引き受けて読む気力が、自分になかった。
伊藤計劃は34歳の若さで亡くなっているのです。
原因は癌。
本作を書いているときは、
すでに再発していたのだそう。
10日間という短い期間で疾走するように書かれたこの作品。

こんなに現実をしっかり見たいという意志のある人だったら
どんなにか生きたかっただろう、と考えてしまいました。

あーなんかわたしが書くと重たくなってだめだなー
そんなこんなとは関係なく、
びっくりするくらいおもしろい物語なので、
SFなぁ、なんて苦手意識のある人こそ
ぜひ読んでみてください。

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